第1章 いい加減。
「いないっスけど?」
「え? 二口くん男前だから絶対彼女いると思ってたのにー。」
信号機が赤から青に変わった瞬間、俺から目をそらして前を見る一二三さんが車を発進させた。
「そー言う、一二三さんはどーなんスか?」
「居ないんだなー! 1ヶ月くらい前に別れたの! やっぱ合コンは長続きしないねー」
「つか、いくつなんスか?」
「えー、22歳だよ」
右に曲がる急カーブで一瞬彼女の方に傾いてしまう。
てか今なんて言った? 22? 10歳くらい離れてんのかと思った。
「もっと上に見えた? 職業柄熟練感っての出さないとお年寄りとか指導しても聞き流されること多いからね〜」
「へぇ〜、大変っスね」
「そーそー! 社会人って大変なんよ?」
クスクス笑いながら運転している彼女に目を奪われる。意外と年齢が近いのに大人な女ってこーいうヒトのこと言うんだろうなぁ。
「さて、もう着くよ!」
車を減速させて、見覚えのある住宅街の俺ん家の前に車を停める。
このまま一二三さんと終わらせたくねぇ・・・
来週も会えるけど患者としてじゃなくて、
「連絡先、教えてもらってもいいスか?」
オトコとして見てもらいたいって思ってる俺はどーにもオカシイ。