第1章 いい加減。
「えー。どーしようかなー。」
「大人気ねぇな」
「嘘。じょーだん!」
クスッと笑ってスマホを出す彼女が「IDでいいかな?」ってトークアプリのIDを表示しているから、俺が入力して登録する。つかトークの名前が。
「みりんって何スか?」
「あ、それ私! 一二三 凛 だから、みりん!」
私の愛称みたいなもんよって笑ってる彼女がさっきまでの凛々しい顔から一変して可愛い。
「へぇ〜。調味料。」
「何? 結構気に入っているんだけど!」
思わずバカにしたように一二三さんを見ると一瞬ムッと唇を尖らせていたがすぐクスクス笑って流される。そこはやっぱり大人だなって思うから悔しい。
「二口くんは顔に似合わず口が悪いねぇ」
「一二三さんほどでも。」
それじゃ、送ってくれてありがとうございましたーっとニッコリと笑顔を作って彼女の車から降りる。
「おやすみなさい」
「おやすみッス」
またねっと手を振って車を発進させた彼女のハリアーを見えなくなるまで見届けた。
「やっぱ車ってイーヨなー」
通学に楽そうって良からぬことを考えていると、ふと気づいたこたがある。
そういや掃除してもらった歯が全然気になんねぇな。って。