第9章 7:ほんまるのはなし B
「大包平に、問題行動を起こす審神者とか、
本丸解体の話をしたんだけど」
「はあ」
あいまいに相槌を打って、箸を進める。
「その時に、今まで解体してきた本丸のことを思い出してね。
なんか不思議だなーって思ったの」
食事中で口が開けないので、視線で先を促せば、
主はぺらりと資料をこちらに向けた。
「例えばこの審神者ね、
刀剣男士のこと、愛してるって言ったのよ。
事実、三日月とも恋仲になった。
……ほかの男士からも性的に加害されてた痕跡があったけど」
平然と言うな平然と。
「加害、ですか」
「ごめん、飯時にする話題ではなかったわ。
でも彼女、ブラックに放り込まれて、まず襲われたみたい」
飲み込みながら聞き返せば、ばっさりと主は言い捨てる。
「霊力の痕跡から、その後もひどかったぽいなー。
ほかの本丸もそんな感じで、
審神者が刀剣男士の支配下に置かれた本丸は、
例外なく解体に至ってる。
でも、どこでも審神者は刀剣男士を愛してるっていうし、
愛してるっていう割には、やってることが」
「業務の放棄、本丸解体の危機を呼び込んでいる」
「そうよー。
本丸をなくせば男士の行き場がなくなるのに、
改善しようとしないの。
それで気づいたんだけど、刀剣男士はある程度、
審神者の願望通りに育つでしょ?」
茶をすすろうとして、手が止まる。
主が資料ファイルに閉じなおし、
意味ありげにこちらを見つめた。
「ねえ、へし切。
人に愛されたあんたに聞くけれど」
形のいい眉が、くいっと持ち上がる。
「この審神者たちの言う愛してるって、
どういう意味、なんだと思う?」