第11章 9:ほんまるのはなし
出陣の際の後方での指揮。
これは本来、審神者にしか許されていない。
他にも、略式の手入れや、審神者の業務形態。
政府における刀剣男士の位置付けなども、
本丸の中で知識として共有された。
このおかげで、
大掛かりな修繕と鍛刀以外は、
すべて刀剣だけで対処できるようになった。
同時に、本丸の機能だけでいえば、
主は大事な時以外、
特にいなくても困らない人間、
という扱いへとシフトした。
「恐ろしくは、無いのですか?」
そんなことを、主に訊ねた覚えがある。
替えがきく。
量産品と同じ。
いても居なくても変わらない。
本丸の効率良い運営システムを立ち上げた結果、
今の主は、そんな位置にいる。
それを眺めているだけで恐ろしかった。
人に親しまれ、愛されて、特別になって、
語り継がれないと死に絶える。
そんな付喪の目から見れば、
主の行いは自殺行為だ。
だが。
「別に。何も怖くないよ」
主は首を横に振った。