第2章 2
「招かれてもいない他所の本丸に、気づかれずに入れるものなのか」
丙午が仕事の手を休めないまま語る顛末に、
書類整理を手伝いながら紅色の髪の男が問う。
「三日月以外にも男士はいたんだろう」
「そりゃあ政府の依頼だし、外から開錠してもらったんだよ。
あとは…練度の差?」
幾度も出陣要請を突っぱねていた元ブラック本丸は、
男士の練度が著しく低かった。
対して、こちらはほぼ限界値まで鍛え上げられた男士を連れていったのだ。
夜目が利きづらい太刀にすら侵入を許すほど“なまくら”揃いの男士たちは、審神者の怠慢の賜物である。解体に同行した丙午は大いに呆れた。
「随分と一方的だったんだな」
「他の本丸を相手にするときは、全力を出すのが礼儀ってものでしょ。
……ま、ちょっと厄介な場合に備えて、って言うのもあるけど」
「厄介な場合?」
相手の方が、練度は圧倒的に低いんだろう。
男の怪訝そうな顔に、丙午はデータ入力の手を止めた。
「そっか、大包平にはまだ教えてなかったんだっけ?」