第9章 7:ほんまるのはなし B
整理のついで、現在に至るまでの記録を読み返せば、
自然と笑みがこぼれ
「楽しそうねーおへしー」
「げ」
……かけたところで、横あいから覗き込む顔があった。
反射的にファイルを閉じて飛びのく。
「こんなに根詰めなくても、
うちの本丸ダイジョーブだと思うけどー?」
先刻自分がいた位置に目をやれば、
書類の山から紙をぺらりと捲りあげ
適当に内容を視線で追う、丙午の姿があった。
「この本丸が急になくなっちゃえば、
恨む先が無くなった霊力も呪詛も、
コントロール難しくなるんだし」
禁呪の引き取り先だって探すのきついのにねー
と悪戯っぽく笑い、主は書類を元の山に戻す。
彼女の言う通り、
禁呪という面倒事を一手に引き受けたことが、
この本丸の盾として機能している節もあった。
「そう仕組んだのはお前だろう…」
「あったりまえじゃーん。
使えるものは、丙午ちゃん何でも使っちゃう!」
ため息混じりの指摘に、
主は絶妙に腹の立つドヤ顔で胸を張る。
その根性は評価してやると言えば、
顔の横に両手でさっとピースサインを付け足した。
「それはそうとへし、昼まだでしょ」
「その顔のままで言うな、手を降ろせ」
「このウルトラスーパーキュートなポーズをやめろと…?」
「喧しい」
面倒になってきたのでばっさりと言い捨てると、
主はふざけたポーズのまま、表情だけが無に変わる。
「その真顔もやめろ」
「えー!」
「全体的に雰囲気がうるさい」
「理不尽!」
ぶーたれ始めた主の鼻を軽くつまめば、
喧嘩中の猫のような、ふぎゃあという声を上げた。