第9章 7:ほんまるのはなし B
書庫に保管されている書類は多岐にわたる。
中でも、今回の監査で厳重に目を通されるであろうものを
まとめ終えて、ようやく一息ついた。
この本丸で保管している、禁呪媒体の一覧名簿。
審神者が男士へ禁呪を使用している恐れがある。
という内容で通報されたのであれば、
確実に名簿の内容が正確かどうか、
政府は念入りに確認するはずだ。
新任がこのことを知っているのかいないのか、
それはわからない。
ただ、この本丸が禁呪を扱っている、ということは、
まぎれもない事実だった。
神霊への魅了。攻撃。操作。いうなれば干渉。
強力な効果故に禁じられ、
所持者から回収された呪具たちは、
この本丸を取り巻く湖の底に沈められている。
沈められたうえで、霊力だけを引きずり出され、
本丸の運営のための動力源として再利用されていた。
自らの凡庸な霊力量では、
本丸を運営しきれなくなると判断した主の発案によるものだ。
人ならぬものの寵愛を受けて、
莫大な霊力を持つ審神者もいたが、
主にその手の加護は一切なかった。
一切なかったから、
邪念や呪詛を燃料にしようと考えたらしい。
加護のあるものは、禁呪の類を浄化して、無駄にしてしまう。
もっと有用に使えはしないかと試した結果が、これだった。
霊的干渉により精神が参るのではとの声もあったが、
今のところ、丙午に不穏な兆候は見られないため、
禁呪を電池代わりとした本丸運営は続けられている。