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さにわのはなし【刀剣乱舞】

第8章 7:ほんまるのはなし


「性能のいい武器と同じで、
 強い本丸は扱いにくい、ってやつ?」

まさに俺みたいに、と付け加えれば、
「そうだな」と巴型はあっさり肯定する。

「そしてむこうは、戦に出て日が浅い主の本丸。
 先代審神者も随分慕われていた、とは長谷部に聞いた。
 新任は先代の近親であるなら、
 審神者自身に問題がない限り、
 暴走はしないだろう。
 ……いや、できないといった方が正しいな」

「なーるほど、あっちの本丸は大人しいから、
 多少放置していても問題ないってワケだ」

そして、恐らく任務のノルマについては、
あちらの男士もよく知っている。
じきに新任審神者に改善を要求するだろう。

しかし戦い慣れというのは、
一日二日でどうにかできる代物でもない。

さらに、引継ぎというのも大きな壁だった。
先代の審神者に合った本丸の運営方法だったからこそ、
あれだけの戦闘をこなせたのだ。

トップが変わってしまった以上、
審神者の技能の習熟度、学習環境。男士との信頼関係。
運営体制の確立など、様々な要素を見直して、
再調整する必要が出てくる。

とにもかくにも、あの本丸には時間が必要だ。

「つまり、何?
 主はあの新任がノルマをこなせる程度に戦い慣れするまで、
 あえて挑発して監査を呼ばせることで、
 新任が政府に叱られるまでの時間稼ぎしたってこと?」

「実際はどうなのか知らないがな。
 俺は先ほど長谷部に前例を聞かされ、
 それを元に考えただけの話だ」

「ふーん…」

なんとなく、巴型の横顔をまじまじと見つめる。

"へし切長谷部"と"巴型薙刀"は、
主に頼りにしてほしい性格のため、
あまり相性が良くないという評判だった。

加州自身、演練場で、ほかの本丸の巴型と長谷部が
誉を奪い合って火花を散らしている様子を
目にしたことが何度かある。
……巻き込まれたこともある。

物静かな巴型とはあまり話す機会がなかったため、
うちの個体もそうなのかと思っていたのだが、
淡々と述べる巴型の様子には、
まるで長谷部に対する対抗心らしきものが見えなかった。

「……なんか、仲いいんだね」

もっと喧嘩するかと思ってた、とこぼせば、
巴型が雀のように首を傾げた。

「なぜそう思う」
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