第8章 7:ほんまるのはなし
なるほど、遅かれ早かれ、
新任の審神者の本丸にも監査が入る確率は高い、
ということか。
そして不定期監査業務は、本丸内の不正を洗い出すため、
かなりのデータを徹底的に見分することになるのは
知っていた。
定期監査時には政府も人員を増やして事に当たるが、
不定期はそうではない。
つまり、同時期に複数の不定期監査を入れることは難しい。
「あちらもこちらもいきなり監査が入るとなると、
政府は当然"危険度の高い本丸"を優先してくると思うが」
「危険度の高い、ね。
俺たち、けっこう貢献もしてるんだけど…」
しているんだけど。
それはもっぱら武力で、というわけで。
だからこそ普段の任務に加え、
ほかの本丸の刀剣破壊を任されていることも知っている。
戦場に居着こうとする連中は、戦争がないと生きていけない。
本丸という鳥かごの外を目指さない審神者は、
いずれ遡行軍の側に堕ちるのが常だった。
だから、本丸と永遠にともにあろうとし、
現世に戻りたがらない審神者と、その男士については、
神になろうが、妖になろうが、刀のまま堕ちようが、
事情を理解し、その心と境遇に共感し、憐れんだうえで、
全て斬り捨てた。
主が眼鏡に適う人間である以上、
主の邪魔になるものに、情けを掛ける必要はない。
故に、同族を討とうが、知ったことではない。
主が政府につく以上は、政府の指示に従う。
自分だけではなく、本丸の総意がこれなものだから、
いくら貢献していても、政府から見れば危険ではあるだろう。