第8章 7:ほんまるのはなし
そもそも監査とは、
政府の担当者が本丸チェックをしに来ることなんだけど。
審神者の心身や霊力に異常がないか、
それが本丸や男士に影響していないか。
安全点検、あるいは定期メンテナンス、
といった意味合いの訪問だから、
それ自体は別に驚くことでも、おかしなことでもない。
だけどこれに、不定期とか、抜き打ちなどが入ると、
少し勝手が違ってくる。
「何かやばいことしてない?」
とこちらを疑いながら、政府が異常を探しに来るのだ。
ブラック本丸とか、早期発見が大事だもんね。
急な監査のきっかけはいろいろあるけれど、
最も多いのは、演練や会議で異変に気付いた、
よその審神者からの通報だった。
今回も、きっとあの時の新任の子に通報されたのだろう。
主、めちゃくちゃブラックみたいなセリフ言ってたし。
新任の子も、正義感は強そうだったし。
それに、新任の子があの場で知ることは無かっただろうけど、
主のご両親は、政府じゃ結構いいポストについている。
一時期政府高官の子息たちによって、
本丸の略取なんかでごたついた時期もあったから、
それも知ってしまえば、ブラックな発言も手伝って、
主はいかにもなマズイ審神者に見えるだろう。
例えば、男士を禁呪で従わせてこきつかう悪徳審神者とか。
人間扱いせずに酷使する虐待審神者、なんて線もあるか。
昔、実際にそういう内容で通報が入ったんだけど、
二度あることは三度あるとはよく言ったものだ。
でも、あの時の切国の予想が正しいんだとしたら、
主があえて新任の子を煽って、通報させた理由がわからない。
というわけで翌日、
その辺に詳しそうなやつに聞いてみることにした。