第7章 6:つうほうのはなし ※
「あなた、何言ってるの……?」
こちらを睨みつけながら絞り出した新任の声は、
怒りで震えていた。
「刀剣男士は大事な仲間……家族じゃないの?
そんな存在を道具扱いなんて、
して良いわけがないでしょう……?」
「わーやっべー、新任ちゃん超いい子じゃーん
よかったなー山姥切国広ー!」
「そんなこと今更言われなくても判っている!」
あまりにもド直球な返答に、
思わず向こうの近侍に声を掛けてしまった。
すごい。このレベル帯の血生臭い審神者連中では
滅多にお目にかかれないピュアな発言じゃないか。
山姥切国広の返答に、新任ちゃんとのラブコメの波動を感じたか、
加州が「なにこれノロケ?」という顔をしていた。
私も、多分ノロケだと思う、と無言で力強くうなずき返す。
ほんのりあっちの国広の顔が赤いのは、
気のせいではないはずだ。
「いやー、倒れたって聞いたときは
どうしたもんかと心配したけど、
ここまで噛みつけるほど元気なら良かったわ。
んじゃ私ら、そろそろ退散しよっかな」
「待ってください」
「ん?」
「丙午さん、でしたよね。
私も聞きたいことがあります」
なんだお邪魔だったかー、と引き払おうとした矢先、
新任ちゃんに引き留められた。
「さっきの演練であんな手傷を負わせた男士に、
どうしてそんな気軽に話しかけられるんですか」
なるほど、国広にあっちの国広を両断させておいて、
全く反省してないっぽい態度が不服という事らしい。
「あなたにとって、刀剣男士ってなんなんですか?
さっきも言ってましたけど、道具?
ただの戦わせるための兵器なんですか?」
言い募る新任ちゃんの目が、涙で徐々に潤み始める。
山姥切国広が、彼女にそっと寄り添った。
男士と人が支え合う微笑ましい光景に、
自然と目元が和む。
「私にとっての刀剣男士、かぁ」
でも。
それはきっと、長続きしてはいけない光景だから。
「面倒な道具だし、危ない兵器だし。
いずれ全ての刀剣男士が消えちゃえばいいかな、
くらいは、いつも思ってるよ。
……刀剣男士は人に非ず、ってね?」
笑顔のままで言えば、新任ちゃんが硬直した。
それでいいのか、という瞳で、彼女は加州を見る。
当の加州は静かに、私の言葉を聞いていた。
そして新任と目が合うと、ふっと柔らかく笑んでみせた。