第7章 6:つうほうのはなし ※
「近親者で霊力の質が近いから、
正式な後継が見つかるまで中継ぎさせてるだけ
…ってこと?」
「俺としてはそうであって欲しいがな。
不適格な審神者や男士の末路は、
アンタたちが一番良く知っているだろう」
加州の疑問に、山姥切国広がため息をついた。
「本丸を生涯の居場所にされるのは、困る」
「俺も主は好きだけど、
本丸って戦争がないと成立しないからねー」
続けられる言葉に、加州も苦笑した。
「死ぬまで本丸にい続けてほしいとか、
そういう男士は斬ってきたけどさー。
俺やっぱり、賛同はできないな。
それってつまり、主に『死ぬまで戦ってろ』
って願ってるのと同じ事だもん」
「ま、刀剣男士は道具で、
私ら審神者は人間だからね。
今フツーに交流できてることが
異常事態というか……」
言いかけた所で、物音がした。
待合室のドアが開いたのだ。
そこには、
まだあどけなさの残る顔つきの、
若い女性がいた。
「主か。体調はどうだ」
無理はしていないか、と
山姥切国広が彼女に歩み寄る。
「まんばくん……その人は?」
「さっき手合わせした本丸の審神者だ」
山姥切国広の答えに、
彼女が『信じられない』という目を向けてきた。
驚嘆というより、軽蔑の視線だ。
隣の加州がややムッとしたのが空気でわかったが、
それを手振りで制しつつ声を掛ける。
「備前国配属、
審神者号は丙午と言います。よろしく。
そちらの前任には度々お世話になりました」
「同じく、丙午本丸所属の加州清光。
これから何かと縁があるかもだし、
主のこともよろしくね」
私が会釈をし、加州が握手を求めた。
しかし彼女は、差し出された手と、
男士二振の顔を見比べる。
「……ごめんなさい、よろしくは、できない」
「主……」
「まんばくん!
だって、さっき、聞こえたんだもん!
この人、演練であんな酷いことして、
しかも『刀剣男士は道具』だなんて!」