第7章 6:つうほうのはなし ※
売店で、食欲がなくても軽く流し込めるゼリーを買い、
さすがにこれで国広を連れて行くのはぶり返すかもしれないだろうから、ということで
代わりに加州を連れて、医務室へ向かう。
尋ねれば審神者本人はまだ寝ているそうだが、
向こうの山姥切国広は完全に回復していた。
演練場専属のスタッフに手入れをしてもらったのだろう。
審神者として顕現はできないが手入れはできる場合、
そういう仕事も割り振られる。
「久しぶりー。そっちの主、どう?」
「……アンタたちか。さっきはやってくれたな」
加州の声に、こちらに気づいた山姥切国広が微笑む。
審神者に重大な変調などはないらしいが、
付き添いなので、審神者が目を覚ますまで待っているという。
待合室に出て、ゼリーを渡すついでに、近況を聞く。
「最近見ないと思ってたら、審神者が変わってたとはびっくりしたわー」
「主が高齢でな。現世で病気の治療に当たることになった。
今の主はその孫娘だ」
引き継ぎで立て込んでいて、演練や出陣に最近出られなかったらしい。
それでも、あそこまでやられるとは、勘が鈍っていたか、と山姥切国広がぼやいた。
「戦うの、孫娘さんは好きじゃない感じ?」
「どうしてそう思う」
「装備見てたら何となく。
そっちの本丸、資材や装備が足りないわけでもなさそうだし、
前の主さん、演練も気を抜かなかったからねー」
演練であれば装備を破壊されてもロスはない。
出し惜しみする必要はないのに、
量産可能な騎兵歩兵の類を持ち出してこられた結果、
先ほどの演練で、装備の読みを誤った。
「装備を自分で決められるんだったら、
そっちの男士は殺意高めで来るでしょー。
私の男士だって何回もぶっ倒されたもの」
「そーそー、腕とか足とか首とか、
俺もしょっちゅうアンタに吹っ飛ばされたし」
私の指摘に、加州が乗っかる。
今はこうしてのほほんとしているが、
審神者どうし、別本丸の個体どうし、
訓練となれば本気で殺し合うのが常だった。
全ては、
それが互いの主を守ることにつながると、
肌で知っているためだ。
「そうだな……主の孫は、いい奴なんだ。
気配りもできる、働き者で、優しい。
だが、優しすぎる。正直、戦うのには向いていない」