第1章 狐日和
……けど意外と早く、城戸ちゃんから連絡があった。
髪の毛の根元がすっかり黒くなって、ますますチンピラっぷりが上がっていた。
でもかなりやつれていて、短期間で何があったのかうかがい知ることが出来た。口元や目元には怪我をした跡がある。
私は会えない間どれだけ心配したか、城戸ちゃんは大丈夫だったのか、色々言いたかったけど、何も言えなかった。
ただ、「おかえり」とだけ。
城戸ちゃんはやっぱり、あのよく懐いた犬みたいな笑顔で
「ただいまっす」
と言って、私を抱き締めた。
少し泣きそうになったけど、なんとか我慢した。
城戸ちゃんは大量の私の大好物とお酒を一緒に持ってきていて、何日酒盛りする気なの?と突っ込むと、へへへ、と眉尻を下げて笑う。
お酒そんなに強くないくせに。
「オレ、これぐらいの事しかできねえっすからね」
でっかい事したいなんて息巻いてたのに、と少し意地悪なことを言うと、しゅん、となってしまった。
「あのね……その事なんですけど。……オレ、足洗おうと思ってるんです」
「……どうして」
「……色々、あって」
それ以上は聞かないで下さい、と目線を落として、発泡酒の栓を開ける。
そうか、ヤクザやめるんだ。
というか、私が知らない間に、城戸ちゃんがそう思うほどの事件があったということか。
私は腕を伸ばして、城戸ちゃんの頭を撫でてあげた。発泡酒の缶に口を付けたまま、城戸ちゃんが私を見る。
怒られた子供みたいな目。
「……さくらさん、オレより年下っすよね」
「そうだね」
「……何でこんな事になってるんでしょうね」
「城戸ちゃんがかわいいからさ」
缶を置いて、うー、と唸る。