第1章 狐日和
そして、今に至る。
私の部屋にふらっと来ては、ご飯を食べて、マンガ読んで、ゲームして、寝る。
あまりの普通っぷりに「お前本当にヤクザなのかぁ〜」なんて言いながらほっぺたを摘んでやると
「マジっすよぉ」と眉尻を下げて困り顔。
そんな城戸ちゃんが、でっかい事。
「……あんまり、無茶をしないでね」
ぽそりと呟くと、聞こえていなかったのか「なんか言いました?」と呑気に返してきた。
人の気も知らないで。
「何でもない」
それからしばらく、城戸ちゃんと連絡が取れなくなった。
ようやくメールに返信があったけど、
「面倒なことに巻き込まれました。さくらさんに迷惑かけるかもしれないんで、しばらく身を隠します」
何やってんだよ、バカ。マヌケ。
ヤクザなんかやってるからだろぉ。
流石に面と向かって罵倒したことは無かったけど、この時もし目の前に城戸ちゃんが居たら手を上げていたかもしれない。
不安が、的中したのかも知れない。
もう、会えなかったらどうしよう。
私は毎日泣いた。