第103章 LOVE LOVE LOVE
(Sサイド)
チャイムが鳴り、教室内がガヤガヤし始める。
はぁ…。
指先にはまだ、智くんの制服の感触が残っている。
さっきは智くんに言われて気づいたから恥ずかしさでいっぱいだったけど…
正直なところ、またつかみたいなって思っている自分がいて。
今度こそ自分の意思でしてみようかな、なんて。
ちょっと気持ちが浮上してきた。
あ、チョコレート…。
スクールバッグの中に入ったままのチョコレート。
智くんはモテるから…
昼休みになったらきっと、告白ラッシュになってしまうかもしれない。
やだな。
だって今日の女子たち、いつもよりキラキラしてる。
いや、女子たちだけじゃなくて…男子たちもいつもよりキリッとしてる。
髪型?
眉毛の手入れ?
そうだよね、バレンタインだし…。
気合いが入っててもおかしくはないし…。
じゃあ、智くんはどうかな。
あはは。
いつもと変わらずにピョコンと後ろ髪が跳ねている。
可愛いんだよな、これ。
思わずその髪に手を伸ばしかけた。
その時。
クラスの後ろドアから「おーい、○○。」って声がした。
ヒューヒューッて、冷やかす空気が流れている。
誰が呼び出されたのか、よく聞こえなかったけど…
もしも智くんのことだったらイヤだって思った。
急に胸がザワザワとうるさくなる。
「智くんっ、智くんっ」
「ん?」
「えっと…。寝癖、寝癖直しに行こっ」
立ち上がった僕は、座っている智くんの制服どころか手首を思いっきり引っ張っていた。