第104章 シュワシュワ
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
櫻井が買ってきたのはサイダーだった。
「ん~っまい!」
「くぅ~っ美味しい!」
思っていたより緊張していたのだろう。
それが弾けたように、二人して今日一番の声が出たように思う。
櫻井が乗るホームには、パラパラと人がいる。
「もうすぐ電車が来るみたいです」
ちょっとさみしそうな声色に、俺の胸がぎゅっとなって。
改札のほうに向いてしまう前に、ちゃんと伝えないといけないと思った。
カバンにサイダーをしまっている手に、俺の手を重ねる。
ビックリしたキミが俺に視線を向けた。
「翔くん、好きだ」
俺の言葉におっきな目が更に大きくなったあと、
「僕も大野先輩のことがずっと好きでした」
って。
「今度さ、そのあたりの話、じっくり聞かせて」
「はい、もちろん」
カンカン、カンカン、カンカン…
踏み切りの音が鳴りはじめる。
「じゃあ…先輩、また明日」
「またね」
お互いに姿が見えなくなるまで手を振っていた。
これから帰ると母さんに連絡を入れると“ショウが待ってるわよ~”って返事があった。
櫻井と気持ちが通じあえたのは、ある意味ショウのおかげかもしれない。
歩きはじめる前に、もう一度サイダーを飲むことにした。
シュワっと刺激があって。
その後は甘さが広がっていく。
櫻井との今日の出来事も頭に浮かんできて。
胸の高鳴りは静まりそうにない。
俺…
今日、眠れるかな。
END