第18章 サクラカオル
(Oサイド)
翔くんが大学生になって。
月に1~2回だけど、会うようになった。
ちゃんと前もって約束すること
これは会うときの条件だった。
だって
本当の姿は
男で…智だから。
翔くんに初めて会ったあの日は
美容関係のいとこの練習に付き合わされて
女装させられた日の帰り道だった。
女の子の格好をして
周りから「可愛い」って言われて
…ちょっと調子に乗っちゃったのかもしれない。
大好きなあの桜並木を
一度でいいから女の子の格好で
歩いてみたいって思った。
女装は最初で最後のつもりだったのに
出逢ってしまったんだ…
翔くんに。
桜が綺麗で眺めていて
さあ帰ろうと振り向いたら
学生服の
キラキラした男の子がそこにいた。
女装しているのが
なんだか恥ずかしくなって
足早に通りすぎようとしたんだけど
「あの…。」
って声をかけられてしまった。
どうしよう…
男だって気づかれた?
気持ちが悪いって思われた?
ドキドキしていると
「桜の花びらが…。」
って聞こえて
髪についてるのを教えてくれた。
でもどこについてるのかわからないし、
長い髪の毛が指に引っ掛かるし。
もうやだ…って思っていたら
その子の手が伸びてきて
なに…なに…なに…って
ドキドキがMAXになって。
そっと花びらをとってくれた指と
優しい表情に
心を奪われてしまったんだ。
一目惚れ…だったのかも。
なんだかすごく心地よくて
もう少し一緒にいたくて
女装してたのをいいことに
咄嗟に女の子の振りをした。
名前もサトコと名乗って…。
それからも暫くは
女の子でとおしてたけど…
自分の心が
苦しくなってきてしまった。
だって
翔くんのことを
好きに…
ううん
愛してしまったから。