第18章 サクラカオル
(Sサイド)
サトコちゃん…
あなたと初めて会ったのは
俺の高校の卒業式の
帰り道だった。
登下校時に毎日通っていた桜並木。
楽しい時も辛い時も
色んな気持ちで通ったこの道を
ゆっくりゆっくり歩いていた。
風にのってきた桜の花びらに
ふわっと包まれ
一瞬閉じた目の先に
あなたがいた。
桜を見上げている横顔が儚くて
桜よりも綺麗だった。
暫くするとあなたは
こっちに向かって歩いてきた。
潤んだ瞳
スーッと通った鼻筋
薄いけどプルっとした唇
ゆるくカールした長い髪
白のワンピースに
薄紫色のカーディガン。
一目惚れだった。
横を通りすぎるとき
髪に桜の花びらがついていたのを見て
思わず声をかけたんだ。
「あの…桜の花びらが…。」
振り返ったあなたは
キョトンとしていた。
「髪についてます…。」
あなたは、どこ?といった表情で
髪を触っていた。
俺は手を伸ばして
そっととってあげたんだ。
「ありがとう。」
微笑んだあなたは
さっきの儚さとちがい
とても可愛かった。
「あら?卒業証書…。卒業式だったのね。おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「卒業後は?」
「大学に通います。あの…あなたは?」
「私は大学1年生よ。あなたより1つ上ね。」
たわいもない話をしながら
歩いた桜並木。
またあなたの隣で
歩きたい。