第18章 サクラカオル
(Sサイド)
サトコちゃんと会う時は
事前に約束をしないといけなかった。
それでも会えれば嬉しいから
そんなに気にはしていなかった。
サトコちゃんとは
好きな音楽や食べ物の味とか
俺との共通点が多くて
一緒にいて楽しかったし、
穏やかでふにゃりと笑う顔が
大好きだった。
とにかくサトコちゃんは
ウブなところが可愛かった。
手が触れただけでビクッとするし
手を繋ぐと真っ赤になって。
抱きしめると
小刻みに体を震わせるんだ。
でも…
唇へキスしようとすると
いつも寸前で拒まれる。
お互いの気持ちは
通じあってるはずなのに。
正直凹むけど
額や頬にするキスへの反応も
目を潤ませて可愛かったから
それでよしとした。
いつかは唇にも…
その思いは心に秘めてたけど。
半年を過ぎた辺りから
忙しいからと
なかなか会えなくなってきて
不安だった。
だから…
サトコちゃんの大学に
こっそり
行ってみたんだ。
一目見れればそれで良かったのに。
見間違うはずはないんだ。
そこには
サトコちゃん
じゃなくて…
友達らしき人達に
“さとし”
と呼ばれている
男の
あなたがいたんだ。
一瞬目があった。
あなたは驚いているようだった。
俺は
ある思いを決意して
その場を去ったんだ。