第99章 Bittersweet
「んふふ。幸せそうな顔してる」
「えっ、あ…はい」
大野さんに表情を見られてたのはちょっと恥ずかしいけど…
俺と同じように大野さんもニヤニヤしてるの、隠せてないですから。
2人でふふって笑いあって。
「じゃあ…帰るか」
「はい」
舞い上がっててすっかり忘れてたけど…ここ、会社でしたね。
俺はコートにできたシワを伸ばし、ビジネスバッグとケーキの箱を持った。
それを見て、大野さんが入り口に向かって歩き出したから、俺もその後に続いた。
大野さんが入り口の前で数秒立ち尽くす。
どうしたのかと声をかけようとしたところで、大野さんが俺のほうに振り向いた。
「あのさ…」
「はい」
何を言われるのだろうと、俺も緊張が走る。
言葉を待っていると、大野さんの手がケーキの箱に伸びてきた。
そして大野さんはそれを、ここに来た時と同じようにあのビジネスバッグ風なトートバッグの中に入れた。