第98章 夢日和
寝癖で跳ねてる髪。
広めの首回りから見える綺麗な鎖骨。
ニットの裾から控えめに“こんにちは”してる翔くんの前のピーと…。
「さと、く…?」
ぽやっとした表情で目を擦りながら、おいらの名前を呼ぶ掠れた声。
「んふふ。そうだよ、智くんだよ」
おいらはベッドに腰かけた。
斜め後ろから感じる視線。
あ。
今…
おいら、翔くんにロックオンされたかも。
そういえば…
前にさ。
“雛鳥が生まれて初めて見たものを親だと思う習性って何だっけ?”
っておいらが聞いたらさ、翔くんが教えてくれたっけ。
『それね、刷り込みっていうんだよ』
って。
翔くんがジュニアで入って入ってきた時さ、その相手がおいらで良かったって本当に思う。
ジャニーさん、いつも翔くんをありがとう。
「もう。智くん、何考えてたの?」
おいらは翔くんに背中から抱きしめられ、身も心もあったか~くなる。
「ねぇってばぁ」
んふふ。
翔くん、拗ねてるな。
「ん~っとね。ジャニーさん」
「な、何でジャニーさん?」
「んふっ。翔くんをありがとうって」
背中越しに、翔くんの体がビクッと動いた。
「…よくわからないんだけど」
おいらの肩に頭を乗せながら、翔くんが呟く。
でもさ、翔くんはわかってるよね。
声が照れてるし、耳が真っ赤だよ?