第98章 夢日和
その時にはもう、おいらは翔くんのことが好きだって自覚はあったし、もしかしたら翔くんもおいらのことを…って感じてはいた。
だから目の前のおっきな瞳から送られる、愛しい人を見つめるような真っ直ぐな視線がくすぐったくて。
おいらはついニヤケそうになるのを口を尖らせることで何とか隠しながら、ペンを走らせていた。
なのにだ。
「大野くんってさ、集中してる時って口が尖るんだね」
なんて言いながら、翔くんはくふくふ笑ってて。
翔くんのせいだろ?って思いながらも、今度はおいらが笑ってる翔くんから視線を外せなくなった。
すっげぇ可愛い顔して笑ってるんだもん。
本当に、ね?
自分でもびっくりしたんだ。
翔くんの笑い声が止まって…
ばちんって音がしたように目があって。
翔くんの瞳にはおいらがいて。
おいらの瞳には、きっと翔くんがいて。
ドキドキなんて表現じゃ伝わらないほど、胸がきゅっとして。
どちらからともなく体を伸ばしながら顔を近づけていったおいらたちは…
ちゅっ。
と、触れるだけのキスをしたんだ。
「唇が離れた時のさ…」
おいらはソファーから落ちないように気をつけながら体を動かし、今度は翔くんを下にした。
「もっとしたい…って顔をした翔くんが忘れられない」
「…バカじゃないの。そこは覚えてなくてもいいのに」
「んふふ。嬉しいくせに」
おいらは恥ずかしがる翔くんの両手を掴み、顔の横に縫いつけた。