第96章 ワインレッド~season~
「あ、あれ?智くん…?」
目を覚ました翔くんは、体の向きを変えているようだ。
「智くん、手…ちょっとぉ…」
翔くんの胸の上にあったおいらの手が、横向きの体勢になった翔くんの腕の上にまわっている。
このまま翔くんを引き寄せて、ぎゅっと抱きしめたくなったけど…何とか気持ちをしずめた。
「ねぇ。智くん、起きて」
声からして、翔くんが戸惑っているのがわかる。
もう少しこうしていたいけど、目的があるから…
「ん…しょ、く…?」
おいらはいま気づいた風にしながら目を開けた。
「智くん、寝かしてくれてありがとう。あの、手が…」
「あ、ごめん。おいらいつも枕とか毛布とか、いつの間にか抱きしめてるんだよね」
「あはは、そうなんだ」
それだけなわけないのに。
翔くんが少しも疑問に思ってないことが、なんだかさみしい。
…次に会った時、翔くんはちゃんとこの状況を覚えていた。
2回目は、ワインで試してみた。
1回目と同じで翔くんが眠ったあと、胸のおさわりと少しだけレベルを上げて…寝た振りしながら足を絡ませてみた。
目を覚ました翔くんは
「身動きできないし…」
って苦笑いしてたけど。
…次に会った時、翔くんはこの時のことは覚えていなかった。
3回目は、焼酎。
眠っている翔くんの胸に頭を乗せてみた。
翔くんは目を覚ました時
「智くん、重いよ~」
って、やっぱり苦笑いしてた。
…次に会った時、翔くんはこのことを覚えていた。
4回目は、もう一度赤ワインで試してみた。
赤ワインではこれまで2度に渡り、翔くんはおいらとのやり取りを覚えていない。
もし今回もそうだとしたら…。
おいらは眠りについた翔くんの胸だけでなく、スラックスの上からお尻と…翔くんの体の中心にもそっと触れてみた。
胸の粒も中心も、しっかり反応していて。
目を覚ました翔くんは
「ねぇ、ねぇ、智くん。にゃんでこんにゃににゃってんの?」
って、おいらの腕をバシバシ叩きながらアタフタしてた。
そして。
今回も翔くんは次においらに会った時、やり取りを覚えていなかった。
やっぱり。
翔くんは…
赤ワイン飲んだ時って
記憶を飛ばすんだね。