第96章 ワインレッド~season~
「智くんは飲んだ?」
「うん、飲んだよ」
「嘘らぁ、残ってるぅ。一緒に楽しむんでしょっ」
翔くんはおいらのマグカップにワインが残っているのを見て、残りを飲むよう促してきた。
翔くんって酔うとすごく可愛くなるんだなぁ。
潤んだ瞳の上目遣いに負けたおいらは、グイッとワインを飲み干した。
翔くんが満足げにパチパチと手を叩く。
そんなところも可愛くてたまらない。
ワインの前にビールや焼酎を飲んでいたのもあってか、体がぽわんとしてきて、おいらも酔いが回ってきた感じがした。
さっきまでニコニコしていた翔くんが、ウトウト船をこぎ始める。
「翔くん、少し寝よ?」
ベッドで寝かせてあげようと思ったけど、声をかけても体を揺すっても、翔くんは目を覚ます様子がない。
そのうちに、おいらも翔くんと同じように眠気が強くなってきて。
脱力気味になったおいらは、翔くんを起こすどころではなくなった。
「ん~」
翔くんがラグの上に横になる。
「ここで寝ちゃダメだよ…」
そう言いながらも、おいらも翔くんの隣に体を横たえ、ラグの上で雑魚寝してしまった。
それから暫くして。
おいらはトイレに行きたくなり、目を覚ました。
すぐ横で、翔くんが気持ち良さそうに眠っている。
んふふ。
可愛い寝顔してる。
「ちょっと待っててね。すぐ戻るから」
おいらは小さな声で呟き、翔くんを起こさないようにトイレに向かった。