第96章 ワインレッド~season~
「たしかここに…」
おいらはキッチンの引き出しを開けて、ワインオープナーを取り出した。
もしかしたら必要になる時があるかもしれないよって言って、自宅にあったものを持たせてくれた母ちゃんに感謝しないと。
食器棚にはワイングラスも並んでいる。
だけど、おいらも翔くんも手に取ったのはマグカップだった。
緊張してワイングラスを倒しそう…って理由が一緒だったから、お互いに笑ってしまった。
ワインはマグカップの4分の1くらいに注いだ。
引き込まれるようなワインレッドと香り。
チラッと翔くんを見ると、うっとりとした表情をしていて。
おいらはそんな翔くんを見ているだけで酔ってしまいそうだった。
「じゃあ…」
「乾杯」
マグカップに口をつけると、鼻腔いっぱいに香りが広がった。
おいらはそれだけでクラクラしそうになり、一口だけ含んだ。
「うわっ。美味しい…」
翔くんが味わうように口を動かしている。
ワインで潤っている翔くんの唇…
キスしたいなって思った。
翔くんはあっという間にマグカップのワインを飲みほしてしまった。
「ワイン飲むの初めてだったんだろ?大丈夫か?」
ちょっと心配になる。
すると翔くんはへへって笑い
「大丈夫でありますっ!」
って、敬礼のポーズをした。
大丈夫じゃないでしょ。
翔くん…
酔っちゃったんだね…。