第94章 愛と勇気とサクランボ
Oサイド
制服の上衣を脱いだあと、櫻井は迷うことなくYシャツのボタンを外していく。
チラチラと見え隠れする、白い肌…鎖骨…胸板…。
清潔感のある真っ白なYシャツがはだけていくにつれて、櫻井の色気が引き出されていく。
その光景が綺麗だったから…
Yシャツを全て脱ぎとってしまうよりも、肌を少し隠した姿を描きたくなった。
櫻井に“待った”をかけ、少しずつYシャツを下ろすように促すと、櫻井はそれに従ってくれた。
なだらかな肩に続き、筋肉のついている男らしい上腕が現れ、俺はそのギャップに心惹かれた。
上腕が半分出ている位置でストップをかけ、鉛筆とスケッチブックをすぐさま手にとった。
デッサンを始めてから数分が経つと、櫻井の肌がうっすらと紅潮してきたことに気づいた。
「もう少しで描き終わるから」
てっきり、俺にじっと見られていて恥ずかしいのだろうと思い、そう声をかけた。
だけど、櫻井からは予想していなかった言葉が返ってきた。
「僕、体を作ってきたんですけど…」
「えっ?」
「もっと自分を磨いて、一皮剥けるって…」
「あぁ、覚えてるよ」
「腹筋も割れてるし、脚もそれなりに筋肉つけてて…」
「う、うん」
「もっと見たいなって気持ちにはなりませんか?僕、なんなら全て脱ぎ捨ててもいい覚悟はありますから」
必死に伝えてくれつつも、体勢はちゃんとキープしたままなところが櫻井らしくて…
好きだなぁって思う。
ホント、愛しくてたまらない。
「なぁ、翔くん」
俺は鉛筆とスケッチブックを置き、櫻井をそっと抱きしめた。
櫻井は俺の肩に額を当て、数回擦り付ける。
…本当に可愛いやつだな。
「俺もね、我慢してるんだよ。さっきから翔くん、綺麗だし、色気が半端ないから…。でもさ、ここだと落ち着いてじっくり見れないから…今日はこのままじゃダメ…?」
櫻井の耳元で優しく囁いた。
「ううん、ダメじゃない」
そう返事をした櫻井は、耳もみるみるうちに赤くなった。