第94章 愛と勇気とサクランボ
Oサイド
櫻井とキスしてることに、自分でもびっくりだった。
だけど、俺以上に固まってる櫻井が愛しくてたまらなくなって、何度か唇を啄んだ。
“せ、せん、せ…”
櫻井の掠れた声にゾクゾクする。
ヤバイ…
これ以上続けたら、止められる自信がない。
“も、だめ…です”
息を途切れさせながら櫻井がそう言ってくれて、正直なところ助かった。
「ん…」
俺は名残惜しく思いながらも、唇を離した。
この後は授業もあるし…。
自分にも言い聞かせるように、真っ赤になってる櫻井の頭をポンポンしていると、櫻井が首を縮めた。
恥ずかしいんだろうなってわかっていながら
「ん?どうした?」
って声をかける俺も、実は相当舞い上がってるんだと思う。
櫻井との会話が途切れた時、登校してきた多くの生徒たちの声が聞こえた。
そろそろここを出ないといけないな。
そう声をかけようと櫻井を見ると、アンケート用紙の入ったファイルの端をキュッと握っていた。
なんだよ…
そんな姿されたら、離れられなくなるだろ。
櫻井の手に触れようと手を伸ばした時、
「あのぉ」
ってドアの向こうから声がした。
「二宮先生…?」
「あぁ、そうだと思う。ちょっと行ってくる」
立ち上がった俺を不安げに見る櫻井。
俺は心配するなの意味を込めて櫻井の肩にポンと手を触れてから、ドアのほうに向かった。