第94章 愛と勇気とサクランボ
Oサイド
二人の顔の距離の近さは、櫻井も感じていたようだった。
“心臓がもちません”なんて。
その表現の可愛いらしさにキュンとなる。
もっと櫻井の可愛らしい面を見てみたい…。
気持ちが昂った俺は
「アゴを出したらくっつきそうだな」
って言ってみた。
唇がつくかもしれない、っていう意味を込めて。
だけど櫻井は
「アゴ同士がくっつきます」
って返答をした。
うん、そうだよね…それはごもっともなんだけどさ。
うーん…。
遠回しだと、櫻井にはなかなか伝わらないのかな。
だから俺は、ストレートな言葉で言ってみようと思った。
「唇を出したらどうなるかな」
って。
すると、櫻井は“ん~”って唇を突き出した。
まるでタコのように。
本人は決してふざけてるわけではないと思う。
櫻井って、意外と鈍感で天然っぽいのかも。
赤くプルっとした櫻井の唇はたとえタコのようにしていても、かなり魅力的で。
その唇に触れたい、触れたくてたまらない。
自然と吸い寄せられていったのか…
目を見開く櫻井が見えて。
唇にも感触があって。
あっ…と気づいた時には、櫻井の唇と俺の唇が重なっていた。