第94章 愛と勇気とサクランボ
Oサイド
「人様の恋愛にとやかく言いたくはないですけど…相手が櫻井ってなると、話は別」
まさか二宮先生も櫻井のことを…?
そう言いかけた時、二宮先生がくくっと笑った。
「そんなしかめっ面しないでくださいよ。まぁ…ね?可愛い生徒の1人ではありますけど、アンタが抱いている恋愛感情とは違いますから」
「そんな、恋愛感情なんて」
「ありますよね?だから今、尻込みしてるんでしょ?」
「それは…受験シーズンに差し掛かるから…」
櫻井は有名大学に進学したいと聞いている。
「あのね、少なくとも櫻井は覚悟の上でこの進学校に来たと思いますよ?もし櫻井のことを想うのであれば、気持ちを乱れさせるようなことは控えてもらいたいんです」
「だから俺は、櫻井がこれ以上のめり込まないようにと思って…」
「そんな風に思いつつ、今日はアンタから櫻井に会いに来たんですよね?」
「行事ごと、頑張ってたから…」
「ふふ。櫻井なら大丈夫だと思いますよ?恋も勉強もね。…っていうか、今だって切ない恋の真っ只中だし?」
「二宮先生…」
「アンタも知っての通り、櫻井はモテますからね?それに、櫻井の友達の相葉と松本はすごくいいヤツだし?アンタに見切りをつけて、そっちになんてことも…」
「ダ、ダメッ。それは絶対ダメッ」
「自分から櫻井を遠ざけてるのに?」
「さっきまでは確かにそうでした。でも今は違う」
二宮先生とそんな話をしていると、外からワイワイしてる声がしてきた。
「…櫻井?」
その声の中から櫻井のものをキャッチし、再び外に視線を向けた。
「噂をすれば、相葉と松本もいますねぇ」
二宮先生も俺の隣に来て外を眺める。
『うぉ~っ!諦めないからな~っ!』
櫻井の叫びが、俺の胸に響く。
「相手は“諦めない”ですって」
「はい」
「あとはアンタ…大野先生次第ですからね?」
「はい、わかってます」
「ところで…二宮先生はどうしてここに?」
「文化祭で集まったアンケートを白うさぎちゃんに渡しに来たんですけどね。誰かさんが泣かして帰っちゃったので…明後日にします」
「それは…巻き込んでごめんなさい」
俺も、諦めないから。