第93章 またこの場所で
Sサイド
ジリジリと照りつける太陽。
庭では今年もまた、ひまわりが元気いっぱいに咲いている。
その根元には、絵の部分が見えるように埋めた2枚のプレート。
「この辺りでいいかな」
「うん」
何度となく通った門の横。
僕は智くんと一緒に、表札を取り付ける。
道のりは険しかったけど…智くんと同じ思いでいたから、強い気持ちを持つことができた。
『大野・櫻井』と掘ってあるそれはまだ見慣れないのもあって、ちょっぴり照れる。
「こんにちは」
「あっ、じいちゃん!」
「2人とも元気そうだね」
背中越しに声をかけてきたその人は、少しシワが増えていた。
「絵をね、持ってきたんだ」
縁側でゴクッと麦茶を飲んだ親友さん…いや、智さんが包みを開いていく。
目に飛び込んできたのは、ひまわり畑にいる男の子の絵。
「うわっ。すごいイケメン」
「この子、しょおくんですよね」
「うん、そう。ずっと記憶にあった男の子の絵」
趣味で描いてるって言ってたけど、職業にしてもいいんじゃないかってくらい上手でびっくりした。
僕的には、おじいさんが描いていた独特なシワの線も大好きだったけど。
おじいさん…いや、しょおくんはひまわり畑でよく迷っていたと聞いていた。
でも僕は、絵の中のしょおくんに別の印象がわいてきたんだ。
「不安げというよりも瞳に力強さを感じます」
「んふふ。嬉しいな。しょおくんさ、迷っても迷っても何度でも挑んでたから」
「なんか、じっちゃんらしいな」
「うん」
話を聞いていると、その光景が浮かんでくる。