第93章 またこの場所で
Oサイド
それからは、じっちゃんの思い出話に花を咲かせた。
「しょおくんさ。ひまわり畑のいつも同じ所で迷ってたの」
「へぇ。なんか可愛い」
「うん、可愛かった。普段はかっこいいのにさ」
そう話すじいちゃんの表情が楽しそうで。
もっと話を聞きたかったけど、気づけば青かった空がオレンジ色に変わりつつあった。
じいちゃんもチラッと腕時計を見る。
「さてと…」
「帰られるんですか?」
「うん。趣味で絵を描いてるんだけどね。完成させないといけないの」
「そうなんですか…」
「この絵さ、もらっていってもいいのかな」
「はい、ぜひ」
「おじいさんの力作ですから」
「んふふ。ありがとう」
じいちゃんが嬉しそうにバッグの中に似顔絵をしまう。
その姿を見ていたら、急に寂しくなった。
「そんな顔しないで…なんてね。おいらも寂しいけどさ、今日ここで君たちに会えて良かった」
「俺たちも同じです」
「おじいさんが…どこかできっと同じ空を眺めてるって思う、って言ってたんです」
「…すごいな、しょおくん」
それから暫く俺たちは空を眺めていた。
「もう、行かないとな。暗いとさ、歩くの怖いんだよ」
「じゃあ、駅まで送っていきます」
「でも、君たち掃除するんじゃ…」
じいちゃんもじっちゃんと同じく優しい人だなって思った。
「うぅっ…」
「智くんっ?」
翔くんも優しいし。
もうさ。
こんなにあったかい人たちに触れて、泣けてくるのは仕方ないだろ?
「うっ…うぅっ」
「やだなぁ…僕まで泣けてきた…」
翔くんと2人で涙しながら、じいちゃんと駅に向かう。
3人の中で一番足取りがしっかりしてたのはじいちゃんだった。