第93章 またこの場所で
Oサイド
「翔くんはさ、じっちゃんの名前聞いたことある?」
「ううん、ずっとおじいさんって呼んでたから…。智くんも知らなかったんだね」
「うん。じいちゃん、ごめんなさい」
「教えてあげることができなくてごめんなさい」
「いや、いいんだ。気にしないで」
じいちゃんが俺をまじまじと見る。
「君は…おいらと似てるなって思ってたけど、名前まで同じなんてね」
「えっ、じいちゃんも“さとし”?」
「うん、そう」
にっこり笑ったじいちゃんは、今度は翔くんを見た。
「君は…アイツと似てる」
最初に会った時と同じく懐かしむような表情をするじいちゃんの手が、翔くんの頬に触れる。
…俺の胸がツキンとした。
「ちょ、ス、ストップ、ストップ」
「えっ、何?智くん?」
翔くんはキョトンとしているけどさ…
愛があれば年の差なんて、っていうし。
だけど…
じいちゃんも翔くんも、俺の気持ちはお見通しだったようだ。
「んふふ。大丈夫だよ。似てるけど、君は君だもんね」
「そうだよ、智くん。僕は僕だから…。それに…智くん、ヤキモチ妬いてくれたんでしょ」
「えっ…」
「ふふっ」
じいちゃんが似顔絵を見ながら微笑んだ。
「あれ?ちょっと見せてください」
今まで気づかなかったけど…
似顔絵の裏に何か書いてある。
「“さとし・しょう”…?」