第93章 またこの場所で
Sサイド
土に埋められていたほうのプレートは所々ヒビが入っていたり、絵が消えかかっている部分があって劣化していた。
「もし持ち帰られるなら、おじいさんの妹さんに連絡してみますけど…」
そう言ってみると、親友さんは首を横に振った。
「ううん、大丈夫。見つけられただけで十分」
「いいんですか…?」
「うん、いいの。2枚ともね、ひまわりの根元に埋めていくよ。アイツがそうしてたからね」
「2枚ともって…今まで持っていたほうも?」
「うん。やっぱり2枚一緒がいいでしょ」
親友さんはプレートを見てニッコリした。
「じゃあさ。じいちゃん、これ…」
智くんがカバンの中からあの似顔絵を取り出した。
折り畳んであるそれを受け取った親友さんは、ゆっくり開いていく。
「あはは。これ…おいら?」
「はい。じっちゃんがいつも胸ポケットにじいちゃんの写真を入れてたんです」
「写真?」
「はい。若い頃のなんですけどね。それを見て“あなたは若いまま”とか“シワ1つない”とか言ってたから…似顔絵を書いて渡したんです。シワを足していいですよって」
「へぇ」
「おじいさんがシワを鉛筆で足していくんですけど、それが個性的っていうか」
僕たちが様子を伝えている間、親友さんはクスクス笑っていた。
「んふっ。シワじゃなくてヒゲっぽいのもある」
「何とも味がありますよね」
「おいら、こんなにシワないけどね?」
「そうですよね。うんと若く見えます」
「んふふ、ありがとう。…アイツは…どうだった…?」
「えっと…じっちゃんもシワはあまりなかったし、かなりハンサムでした」
「へぇ…若い子たちにハンサムって言われるなんて、すげぇな」
「はい。モテるのに、ずっと1人だったみたいで」
「そっか…」
「…じいちゃんは?」
「ん?おいらも…ずっと1人。記憶にある男の子のことが気になってたからかな…」
お互いに好きだったんですね、って思ったけど言えなかった。
…親友さんが寂しげな表情をしたから。
智くんも違和感があったようで、僕をチラッと見た。
そんな僕たちを見て、親友さんが眉を下げる。
「顔は浮かんでるのに、名前がね…出てこなくてね。呼びたいのに呼べないの」
…あぁ、そうか。
だからさっきから“アイツ”って言ってたんだ。