• テキストサイズ

キミとボク【気象系BL】

第93章 またこの場所で


Oサイド

翔くんも手をぎゅっと握り返してくれて、心強く感じた。

そのまま2人で猫背の人に近づいていく。

気配を感じたのか、その人が僕たちのほうにゆっくり顔を向けた。



…小さい頃からじっちゃんの話を聞いていたせいなのかな。

何だかすごく会いたかった人に会えた気持ちになって、俺は言葉が出なかった。

その人は俺を見た後、翔くんに視線を移してじっと見ている。

懐かしむような柔らかな表情で。

それはちょっとわかるような気がした。

俺だって初めてじっちゃんに会ったとき、翔くんに似てるなって思ったから。



「君たちはこの家の子?」

「いえ…僕たち、この家の掃除とかさせてもらってるんです」

「これから掃除する予定だったんで、一緒に中に入りませんか?」

「えっ、いいの?じゃあ…そうさせてもらおうかな」

ふにゃっと嬉しそうに微笑むから、俺もつられて微笑んだ。

そんな俺たちを見て、翔くんもクスクスしている。

「今、鍵を開けますね」

翔くんと繋いでいた手を解き、俺はカバンから鍵を取り出した。




門を通った後、周りをキョロキョロ見ながら歩いているその人の姿が可愛らしくて。

じっちゃんも可愛らしいところがあったから…醸し出す雰囲気が似てるかもしれないって思った。

「あっ、ひまわり…」

その人は庭のひまわりを見つけると駆け寄っていった。

身軽さにびっくりしつつ、その人の背中越しに声をかけた。

「じっちゃんが…大事に育ててたんです」

「…じっちゃん?」

その人が振り向く。

「はい。あなたの…親友さんだった…」



俺と翔くんの言葉を聞いたその人は空を見上げて、

「やっぱりここで良かったんだね」

静かにそう呟いた。






/ 1027ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp