第93章 またこの場所で
Sサイド
智くんの体の重みを感じ始めた時、智くんの胸のポケットからカサッと微かに音がした。
「あっ…」
何かを思い出したように智くんが声を発し、ポケットに手を入れた。
そして、見覚えのあるそれを、サイドボードにそっと置いた。
おじいさんが鉛筆でシワを足していた姿が浮かんでくる。
「ひまわり畑ってさ、じっちゃん家がある辺りにあったんだよな」
「うん。おじいさんの親戚さんが育ててたらしいって言ってたよね」
「あの家…どうするのかな」
「うん…」
さっき置いたそれに視線を向けながら、沈黙の時間が流れていく。
「大丈夫だよ…きっと」
「うん…そうだよね」
智くんが僕の体を力強く抱きしめてくれた。
すごくあったかい。
ねぇ、おじいさん。
僕は欲張りなのかな。
このままでも十分なんじゃないかって思うのに、体はもっと触れたいって疼いてるんだ。
僕は智くんのシャツを捲り、胸に手を這わせた。
「え、あっ…翔くんっ」
ちょっと慌てている智くんの素肌に口づけていく。
「あ、ちょっ…」
小さな粒が見えて、ペロッと舐めてみた。
「んっ」
キスしてる時とはまた違う智くんの声がして。
もっともっと触れたくなった。