第91章 初恋花火
「ねぇ…今、何て言ったの?」
僕をのぞきこむ櫻井くんのおっきな瞳がキラキラしている。
ヒューッ…パラパラパラパラパラ…
花火が上がる度に大きな歓声が響き渡る。
一度目に発した渾身の言葉は消えてしまったけど、目の前のキラキラと胸の響きが、僕のハートに再び火をつけた。
周りはみんな花火に夢中になり、空を見ている。
「櫻井くん」
僕が呼び掛けると、櫻井くんが姿勢をただした。
僕は胸いっぱいに、すぅ…っと息を吸った。
下駄を履いてる足を踏ん張り、握りこぶしを作りながら
「僕は櫻井くんのことが好きぃ」
今度はちゃんと櫻井くんに聞こえるようにと、全身を使って伝えた。
はぁ…。
やりきった…。
体の力が抜けそうになった時、櫻井くんが僕をぎゅうっと抱きしめた。
「すっげぇ嬉しいんだけど」
耳元で櫻井くんが囁く。
「あのっ、櫻井くん…」
「俺も大野くんが好きだから…」
それを聞いて、じわっと胸が熱くなる。
「ありがとう。嬉しい」
花火が連発で上がり、クライマックスを迎え始めた。
歓声がひときわ大きくなる。
その音を聞きながら、僕たちはそっと唇を重ねた。