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キミとボク【気象系BL】

第91章 初恋花火



下駄の音が僕の前で止まる。

その人は膝に手をつき、はぁはぁと息を整えながら

「大野くん、大丈夫だった?」

優しくそう言った。

「うん。だいじょぶ」

僕はホッとして、言葉がつまってしまった。

それを聞いた彼…櫻井くんは、ふふっと笑って体を起こした。

「2年前もさ、こんなことあったよね」

「…うん」



それは高校生になって間もなくにあった、学校周辺の散策の時のこと。

履きなれない革靴の中に小石が入り、それを取り除いていた僕は列から外れてしまった。

急いで戻らなきゃと焦りながら走る。

その間に何度か革靴が脱げてしまい、どんどん列が遠ざかっていった。

そんな僕に気づいてくれたのが、違うクラスの櫻井くんだった。



「ごめん」

「どうして謝るの?悪いことした訳じゃないでしょ?」

櫻井くんが僕の隣に並ぶ。

「俺とさ、一緒に回ろう?」

そしてニコニコしながらそう言った。

「でもみんなは…」

「あはは。えっと…みんなにはね、大野くんと二人で回るって言ってきたから」

「えっ、何で…?」

「俺ね。あの時からさ、大野くんと仲良くなりたかったんだ。避けられてるみたいだったけどね」

「避けてたっていうか…恥ずかしかったんだ。あんな姿見られたし」

「…恥ずかしかっただけ?」

「うん」

「本当にそれだけ?」

「そうだけど…」

何だか気になった僕は、勇気を出して櫻井くんの顔をチラッと見た。

「良かった…嫌いだったからじゃないんだね」

胸に手を当てながら、櫻井くんがそう呟く。

「嫌いだなんてそんなわけっ…あの時から僕は……き……」

ドーンドーンと花火が上がり始め、僕の声はかき消えてしまった。






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