第90章 My Angel
「うわっ」
「うおっ」
僕に気づいた櫻井さんが、慌てて浴室の中へ戻る。
あっという間の出来事で…
「見てない、見てないですから」
気が動転した僕は、咄嗟に櫻井さんに告げた。
「ホント…?」
櫻井さんが少しドアを開いて、顔だけ僕に見せる。
「えっと…上半身だけ一瞬見えましたけど…他の部分は本当に見てないですから」
だけど。
今…すりガラス越しに、櫻井さんのシルエットが…
中心辺りが黒っぽく…見えてます…。
僕のムスコがムクッと反応する。
「櫻井さん、これ…」
僕は隙間からタオルを渡した。
「あの…櫻井さん、体の調子悪いですか?大丈夫ならいいんですけど…」
櫻井さんがタオルを腰に巻くのが見えたけど、浴室からは出てこない。
「櫻井さん?」
「えっと…今から言うことをさ、引かないで聞いてくれるかな…」
「あ、はい。わかりました」
「俺ね、ナカ…綺麗にしようと思ってさ…」
「ナカ…?」
「うん、そう。大野をさ、その…汚さないようにって…」
えっ。
それって…。
「どこまで綺麗にしたらいいのかわからなくて…。でももう大丈夫だと思うから…」
僕の為に…
僕との為に…ってことでいいんですよね。
胸がバクバクして、いてもたってもいられなくなる。
「櫻井さん、開けていいですか?」
そう言いながらも、僕は櫻井さんの返事を待たずに浴室のドアを開けて中に入った。
「ちょ、大野っ」
びっくりした表情の櫻井さんが後退りする。
「引くわけ、ないでしょ」
櫻井さんがヒュッと息をのみ、瞳を潤ませる。
「あなたって人は…」
僕は櫻井さんの体をぎゅっと強く抱きしめた。
湿り気のある肌が生々しくて、体が疼く。
「大野…」
まだ不安そうな表情と小さく掠れた声が僕を煽る。
僕は後頭部に手を回し、櫻井さんの唇を貪るように熱いキスをした。