第90章 My Angel
オムライスを食べた後、櫻井さんが洗い物をしてくれ、その間に僕は洗濯物を畳んだ。
「俺のもやってくれたんだね、ありがとう」
「いえ、洗い物してもらったんで」
どうぞ、と櫻井さんに畳んだ服を渡す。
「あっ」
指先が触れて、再び体が熱くなっていく。
「えっと…。大野さ、先に風呂入ってきていいよ」
「わかりました。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
お互いに意識するものがあってなのか、会話がぎこちなかったのは気のせいではないと思う。
さっきまでの流れでいくと、今夜は…。
いやいや、いくらなんでもそれは…早い?
そんなことを思いつつ、いつもより念入りに洗ってみる。
「ん?お前も期待してるのか?」
上を向いてる自分のムスコを見て、僕は苦笑いした。
風呂を出てから牛乳をひとくち飲み、一息入れる。
胸のドキドキとソワソワが落ち着かないのは仕方がない。
櫻井さんの部屋の扉は半分開いていた。
「櫻井さん、風呂どうぞ」
中にいる櫻井さんに声をかける。
「うん。入ってくるね」
部屋から出てきた櫻井さんは普段と同じように、下着とスエットのズボンを持って浴室へ向かっていった。
この後のこと、櫻井さんはどう考えてるんだろうな。
ソファーに座り、クッションを抱えながら悶々としていると、バタンバタンとドアを行き来する音が微かに聞こえてきた。
浴室の向かいにはトイレがあり、お腹の調子でも悪いのかな…と心配になってくる。
様子を見に行くと、浴室とトイレ前の床に点々と水滴があった。
シャワーの音はしていて、浴室のドア前で櫻井さんに声をかけてみた。
「櫻井さん、大丈夫ですか?」
だけど聞こえなかったのか、櫻井さんからの返事はない。
シルエットからして、シャワーで体を流しているように見える。
とりあえず、一旦リビングに戻ろう。
そう思い、踵を翻そうとした時…
シャワーの音が消え、ガチャッとドアが開いた。