第90章 My Angel
何だか無性に、櫻井さんの顔が見たくなった。
昼休み終了まであと15分。
「ちょっと行ってきます」
僕は食堂を出て、部署のあるフロアに急いだ。
今、行きます。
待っててください。
いつも、誰よりもいち早くデスクに戻っている櫻井さん。
今日もやっぱりそこにいた。
資料に目を通す櫻井さんの佇まいは、まさにできる男。
そっか、午後は外出するんだっけ。
家でくつろぐ姿もいいけど、職場でキリッとしている姿もカッコいい。
ハァハァと息を切らしたまま近づいていくと
「あれ?大野、大丈夫?」
櫻井さんが僕に気づき、声をかけてくれた。
椅子に座っている櫻井さんの前に行く。
ん?と首を傾げて僕を見上げる、愛しい人。
やっと息が整った時…
櫻井さんがハンカチを取り出し、手を伸ばして僕のこめかみを拭いてくれた。
ドキドキと高鳴る胸。
まだ他に誰も来ていない、二人だけの空間。
「好きです」
「えっ?」
「僕は、あなたのことが…櫻井さんのことが好きです」
まだ想いを伝えるつもりはなかったけど…
ましてや、ここは職場なんだけど…
気持ちが溢れてしまった僕は
心が訴えるままに、
櫻井さんに好きだと告げていた。