第90章 My Angel
「あの…」
「ん?どーした?」
チラチラとタオル越しに見えるのは、櫻井さんのTシャツの胸元。
「さっきは…なんていうか…ごめんなさい」
「さっき?」
「はい。風呂に行く時…」
「ん〜?大野、何かしたっけ?」
僕の髪を拭いてくれていた櫻井さんの手が止まる。
そして
「おっ、水気だいぶ取れたなぁ」
って言いながら、タオルを外した。
あっ。
思っていたよりもずっと櫻井さんの顔が近くにあって、体がビクッと震えた。
「大野、ちょっと動かないでいて」
櫻井さんが僕の両肩を掴む。
えっ、なに?
どんどん顔の距離が近くなっていく。
なに、なに、なに、なに、なに…
僕の心臓が飛び出るんじゃないかってくらいバクバク脈打つと、
ピトッ…
櫻井さんの額と僕の額が重なった。
えっ…おで、こ…?
色んな意味で恥ずかしくなってドギマギしていると
「ん〜、熱はなさそうだな。良かった…」
櫻井さんが囁く。
「大野の顔がさ、ずっと真っ赤だったから…」
両肩を掴んでいる手はそのままに、くっつけていた額だけ離された。
優しく微笑む櫻井さん。
その上唇には相変わらず白いものが付いたままになっている。
「ん?大野?」
僕の中で何かが弾けた。