第15章 もしも気づいてくれたなら
「キス…したいか?」
「えっ…?」
思いがけない先生の言葉に、すぐには返答ができなかった。
「想像してたんだろ。勇気を出して伝えてきたじゃん。」
「でも…してもいいんですか…?」
「あははっ。遠慮はしないんだ。」
「だって…このチャンスを逃したくないので…。俺…変ですか?」
「ううん、素直でいい。櫻井らしいよ。」
「ありがとうございます…。」
「キスさ、お前からしたいか?俺からしてもらいたいか?」
「できることなら、俺からしたいです。」
「ふふっ。男前だな。いいよ。」
「でも俺、キスするの初めてなので…。上手くできないかもしれないです。」
「ふふっ。そうかぁ、櫻井は初めてかぁ。全然構わないから。思うようにやってみな。」
「……。」
「どうした?」
「本当にいいんですか…?俺、男だし…。』
「俺がいいって言ってんだから。気にすんな。」
「わかりました。」
絵まで描いてしまうくらい、夢にまで見た大野先生とのキスができるんだ。
俺は気持ちを落ち着かせたくて、ふぅーっと息をはいた。
そして先生の両肩に手をおいた。
「センセ…いきます。」
先生は優しい眼差しで俺を見ながら頷いてくれた。
先生の顔に自分の顔を近づけていく。
それだけで心臓がバクバクするし、手も震えてしまう。
想像とは全然違う…こんなにも緊張するなんて思わなかった。