第90章 My Angel
山積みになっていた洗濯物を畳み終えた頃には、僕の中心の膨らみも目立たなくなっていた。
「大野、ありがとな」
キラッキラな瞳で微笑まれる。
僕だけに向けられていることへの嬉しさを感じつつ、後ろめたさもあった。
だって…
僕はあなたのパンツを通して、欲情してしまった男なんですから。
夕食は昼の残りの蕎麦を食べた。
「つゆが絶妙だったなぁ。これからは大野がつゆ担当。なっ?」
「ただ薄めただけですよ?」
「俺じゃあ、あんなに美味しくはできない」
「そこまで言うのなら…わかりました、僕に任せてください」
「よろしくぅ」
そっかぁ、櫻井さんが麺を茹でて、僕がつゆを担当するんだ。
2人でキッチンに並んで。
恋人同士みたいだな。
だけど、僕たちはそうではない。
櫻井さんからしたら、職場の先輩と後輩って関係だけなんだと思うし…
嬉しいような恥ずかしいような、ちょっぴり苦さもあるような気持ちになった。
「大野、今いいかな」
部屋で荷物の整理をしていると、櫻井さんが声をかけてきた。
「大野、風呂入るか?」
「えっ?」
「あはは、何でそんなにビックリしてるんだよぉ」
「だって、風呂入るか?なんて、まるで一緒に入るみたいな…」
本当にもう、ドキドキだよ。
「あはは。そうだったか?ごめん、ごめんな」
「いえ、僕も勘違いしてごめんなさい」
「もう、謝らなくていいから…。まぁ、そうだなぁ。2人で入れないこともないと思うけど」
「えっ…」
「うーん、やっぱり狭いかぁ。よし。俺、入ってくる」
櫻井さんが体の向きを変え、浴室のあるほうに歩いていく。
僕はまだドキドキしながら、その後ろ姿を見ていた。
パンツだけで欲情したのに、一緒にお風呂なんて。
裸の………
いやいや、考えないようにしよう。
僕はさっきみたいに若干前屈みになりながら続きに集中することにした。
だけど元々荷物が少ないから、すぐに終わってしまった。
仕方がない。
布団を敷こう。
僕は部屋に布団を敷き始めた。