第90章 My Angel
疲れがあったのかもしれない。
いや、どちらかといえばホッとしたのだろう。
あれから僕はいつの間にか眠ってしまったようで、目を覚ますと外は真っ暗になっていた。
「あれ…?櫻井さん…?」
ゴロッっとしようと言い出しっぺの櫻井さんの姿が、隣にない。
ん〜っと伸びをしながらリビングに出ると、櫻井さんの部屋から軽快な鼻歌が聞こえた。
ふふっ、何だか楽しそうだな。
足音を立てないようにしながら櫻井さんの部屋に近づくと、洗濯物を畳んでいる姿が見えた。
「あの…」
「あ、起きた?」
櫻井さんが鼻歌と手を止め、僕に視線を向けた。
「すみません、僕だけ寝ちゃったみたいで」
頭を下げながら櫻井さんの隣に座る。
「いやいや、気にしないで。俺も10分くらい前に起きたばかりだから」
…いやいや。
寝起き10分でこの爽やかさはすごいでしょ。
「大野が百面相してる〜」
なんて言いながら、櫻井さんは再び洗濯物を畳み始めた。
あっ…
さっき唇を掠めた櫻井さんの頬に釘付けになる。
肌も綺麗だったな…。
「大野、まだ眠い?」
「いえ、大丈夫です。畳むの手伝いますね」
「うん、ありがとう。でも、大野のほうは片付け大丈夫?」
「はい、大丈夫です。スーツは先にクローゼットに掛けましたから。コレなんとかしないと、布団が敷けないですよね」
「ははっ。じゃあお願いします」
櫻井さん流の畳み方を聞きながら、洋服やタオルを畳んでいく。
何も考えずに目の前にあるものから手に取っていたけど…
これ、パンツだ。
へぇ…
櫻井さん、こういうの履いてるんだ。
これを履いてる櫻井さん…
ちょっと想像しただけなのに、中心が反応してきてしまった。
嘘っ…マジで…?
危ない、危ない。
僕の体がさっきより前屈みになっているけど、櫻井さんには気づかれてはいないと思う。
今すぐは立ち上がれないし、畳む物が多くて良かったよ…ホント。