第89章 教室の片隅で
Sサイド
地蔵くんの姿を見て、暫く固まってしまった俺。
「あ、えっと…おはよう」
そう言うのが精一杯だった。
すると地蔵くんはもう一度
「んふふ。おはよう」
と言って、窓にかけている俺の腕の下から外を眺め始めた。
今まで地蔵くんとこんなに接近したことなんてなくて、鼓動が聞こえんじゃないかってくらい胸がバクバクした。
窓から手を離すと、かがむようにしていた地蔵くんが体を伸ばした。
俺より少し小さい地蔵くんとの距離が更に近づき、ふわっとミルクのような匂いが漂う。
地蔵くんは佇まいだけじゃなく、匂いまで癒し効果がある人なんだな。
肩が触れてしまいそうなことにもドキドキしながら、俺も外を眺めた。
「いい風が入るね」
「うん。気持ちがいいよね」
こんな穏やかな時間がずっと続けばいいのに…なんて。
そう思った途端、俺の中に芽生えてきた思いに気づいたんだ。
…俺は地蔵くんに恋してるんだな、って。