第89章 教室の片隅で
Sサイド
あぁ…
明日からどうしよう。
その日の夜は中々寝つけないまま、朝になってしまった。
「ひでえ顔だな…」
頭もぼーっとしてる。
今日は日直だから、いつもより早く登校しないといけないし。
そうだ、パンの販売がある曜日だっけ。
メロンパン美味しいんだよなぁ。
俺は何とか気持ちを奮いたたせた。
電車では座ることができたから、速攻で眠りについた。
そのおかげで、電車を降りる頃には頭がスッキリしていた。
地蔵くんのことが気になるけど、くよくよしても仕方がない。
「よし、行くか」
職員室で学級日誌を受け取った俺は、教室に向かった。
まだ誰もいない教室。
地蔵くんの席につい目がいってしまう。
数秒してからそれを振り払うように、頭を左右に数回ブンブンとした。
1校時目は数学だっけ。
俺はカバンの中から教科書とノート、筆記用具を取り出して机の上に置いた。
そして教室の窓を開けて空気を入れかえる。
「爽やかだなぁ」
まだひんやりしている朝の風が心地良く感じた。
ガラガラッ…
教室のドアが開く音がする。
誰か来たんだなって思いつつ、窓を閉めようと手をかけた時…
「おはよう」
すぐ後ろで声がした。
体がビクンと反応する。
この声って…。
窓に手をかけたまま、ゆっくり顔だけ振り向くと
ふにゃっと微笑む地蔵くんがいたんだ。