第89章 教室の片隅で
Oサイド
どうしよう…
母ちゃんからの視線、気づかないふりをしてたほうが良かったのかな。
でも、しかたないもん。
優しい視線のこと、ずっと気になってたんだもん。
チラッと見たくなっちゃったんだもん。
あんなおっきな瞳で僕のこと見てたなんて…
ちょっと照れくさい。
視線をそらされた時はさ、そりゃあ凹んだけど…
髪から見える母ちゃんの耳が赤くなっててさ。
もしかしたら、母ちゃんも照れくさくなったのかもしれないなって。
気づかれちゃったよぉ!…みたいな?
んふふ。
可愛いな、母ちゃん。
思い浮かべただけでキュンとする…。
櫻井くんは男なんだけどね。
もう僕のこと、見てくれなくなるのかな。
それはなんだかさみしいしイヤだな。
こんなことばかり考えてたら、授業に集中できないよな。
次、何だっけ。
あ、数学か。
んふふ。
元々苦手じゃん、数学。
だけどさ。
なんだか自分でも不思議なんだけどさ。
母ちゃん、僕を見てて!…みたいな気持ちになってるんだ。
…なんて思っていたけど。
母ちゃんは、ちゃんと集中できてるのかな。
視線をそらしちゃったこと、気にしてるかもしれないな。
あれ?なんだ、これ。
頭の中と連動してたのか、いつの間にかノートに母ちゃんの絵を描いてたみたいだ。
よく似てるだけに、髪型は違くしたほうがいいかもしれないな。
このままだと、正に本人だもん。
んふふ。
自分でも笑えてくる。