第89章 教室の片隅で
Sサイド
どうしよう…
まさか、地蔵くんと目があってしまうなんて。
見てたこと、気づかれたよね…。
変な風に思われたかな。
いや、いや。
俺のことはいい。
それよりも…地蔵くんにイヤな思い、させちゃったかな。
目、そらしちゃったし…。
だってさ、急に目があってびっくりしたんだもん。
いつもの癒しの雰囲気だけじゃなくて、ゾクリとするような綺麗な顔立ちにもびっくりしたんだもん。
チラッとだけだったのに…
あんな表情を見たら、みんなイチコロだよ。
今だって、地蔵くんの顔が頭から離れなくて、ドキドキがじわじわときてる。
授業、ちゃんと受けられるかな。
自信ないな…。
次の授業なんだっけ。
あ、数学か。
計算問題だったら、集中できていいんだけどな。
…なんて思っていたけど。
地蔵くん、大丈夫かな…。
教科書を開いていても、黒板を見ていても、俺の頭の中は地蔵くんがしめていた。
あれ?なんだ、これ。
ふと気づくと、ノートには謎の絵。
いや、これは…あれだ。
頭の中と連動してたのか、俺はいつの間にかお地蔵さんの絵を描いていたみたいだ。
ぶふっ。
自分でも笑えてくる。
こんなこと、初めてだな…。