第88章 果てない空
「おじゃまします」
「ど、どうぞっ」
「んふふ」
「わ、笑わないでよぉ。緊張してるんだからぁ」
「んふっ。ごめん、ごめん」
翔くんと花見の約束をした日。
俺は仕事後一旦帰宅し、着替えをしてから翔くんの部屋に向かった。
出迎えてくれた翔くんが「緊張してる」なんて言ってアタフタしてるのが可愛いくてたまらない。
家で花見をしようって誘ってきたの、翔くんなのにね。
「へぇ…」
「な、何?」
「なんかさ、仕事ができる人の部屋って感じがするなぁって思って」
本やら資料のようなものがパソコン周りに積んではあるけど、俺的には散らかってるとは思わなかった。
読書する翔くん…
キーボードを打つ翔くん…
コーヒーを片手に長い足を組む翔くん…
そこで集中して過ごす翔くんの様子が浮かんでくる。
家具も白で統一されていて、思っていたよりも片付いてるなって印象をもった。
「翔くん?」
「いや、あの…そんな風に言ってくれたの、智くんが初めてだから…ちょっとびっくりしちゃって…」
カッコいい翔くんも素敵だし、目の前のはにかむ姿にもトクントクンと胸が高鳴ってきた。
俺が初めてっていうのも、何だか嬉しい。
「俺は好きだけどな」
「す、好きって」
「うん。好き」
そう言いながら、俺はキョトンとしている翔くんを優しく抱きしめた。